こんにちは。
合気道三級のばーやんです。
テレビ番組などで、合気道を護身術として紹介されることがよくありますよね。
非力な女性でも、襲いかかってきた男性から身を護ることができる、という風に。
確かに合気道は護身術として非常に有効です。
覚えておいて損は決してありません。
でもその反面、気を付けなければいけないこともいくつかあります。
「合気道さえ覚えれば大丈夫!」という訳では決してないんです。
護身術としての合気道について、僕なりに考えてみました。
詳しく順を追って説明していきますので、必ず最後まで読んでくださいね。
目次
護身術は「身を護る術」
まずは護身術とは何かを改めて考えてみましょう。
護身術とは、読んで字のごとく「身を護る術」のことです。
当たり前と思うかも知れませんね。
でも、この意味をちゃんと認識・理解しておくことがとても重要です。
Wikipedia ではこのように定義されています。
「相手を打ち倒すこと」ではなく「自分が安全に逃れる方法」を指導することを重視しており、いわゆる格闘技や逮捕術のような制圧や逮捕を目的とした術技ではない。
(中略)
護身術は、相手を打ち負かすことが目的ではなく、あくまでも自分(もしくは他人)の生命・身体を守ることが最優先事項とされる。
(中略)
格闘技とは違い、相手にダメージを与えるよりも自分にダメージが無いことが重要視されるために相手の間合いに踏み込まず、自分に有利な間合いで戦い、常に「逃げる」ことを念頭におく。護身術 - Wikipedia
まったくその通り!
護身術の目的は、自分の身を護ること。
相手を倒すことが目的ではないんです。
これを勘違いしてはいけません。
僕が通っている道場の館長も、女性向けに技を解説する際は
「相手を倒して、逃げる」
「脇腹を蹴って、逃げる」
「ヒールで踏んづけて、逃げる」
という風に、必ず「逃げる」というキーワードを仰ります。
「四方投げなんてしてたら間に合わない」ということもよく口にされますね。
とにかく早く、最少の動きで相手を崩したりひるませたりして、逃げるためのスキを作り出すことが重要です。
つまり、合気道の技は「逃げる」ことが可能な状況を作り出すための手段でしかないんですね。
繰り返しますが、相手を倒すことが目的ではありません。
それは負うべきリスク?
何かしらのリターンを得るためには、それなりのリスクが伴います。
もちろん合気道も同様です。
「相手を倒す」というリターンを得るには、「自分が傷付くかも知れない」というリスクを負う必要があります。
では、自分の身を護ることを最優先と考えたとき、そのリスクは常に負わなければならないのでしょうか?
違いますよね。
護身術において、そのようなリスクは可能な限り避けるべきものです。
合気道を護身術として使うのは、あくまでそれ以外の手段がなくなったとき。
よりリスクの低い手段が他にあるなら、迷わずそちらを選択すべきです。
一目散に逃げる、近くのモノを投げつける、大声で叫んだり防犯ブザーを鳴らす、などなど。
合気道を含む格闘技や武道を用いた護身術は、どうしようもなくなったときの最後の最後の手段。
それを心得ておいてください。
「逃げる」が最優先
護身術は自分の身を護ることが目的です。
なので、最優先にすべきなのは「逃げる」こと。
さらに言うと、そもそも逃げる必要すら無いように、危険な状況に近付かないことが最も重要です。
合気道の稽古をしているからといって、危険な場面で技に挑戦する必要はまったくないんです。
「何かあったら逃げる」ではなく、「何かある前に逃げる」ことを心がけてください。
遠回りになるとしても、明るい道や人通りの多い道を通る。
短い距離でもバスやタクシーに乗る。
頼める人が居るなら迎えに来てもらう。
どこに危険が潜んでいるかをイメージできれば、いくらでも対処法はあります。
合気道の技はすべて、さまざまなシチュエーションを想定して、それに対処する形で作られています。
ぜひ稽古を通じて、いろいろなことを想定する力を養ってくださいね。
男性に力づくで来られたら女性は敵わない
合気道が護身術として紹介されることが多いのはなぜでしょうか。
それは、きっと「非力な女性でも相手を倒したり投げ飛ばしたりできる」というイメージがあるからですよね。
確かに他の格闘技や武道に比べて、合気道は力が必要なわけではありません。
というよりも、むしろ力を入れてはいけないのですが……。
(詳しくはこちらの記事に書いていますのでご興味のある方はどうぞ)
しかし、どんなに優れた技を身に付けていたとしても、男性に力づくで来られた場合には女性はとても敵いません。
それこそ吉田沙保里選手くらい鍛えてなければ無理です。
酔っ払いが絡んできたくらいであれば軽くあしらうことも出来るでしょう。
でも、本気で掴まれたり押さえつけられては、文字通り手も足も出なくなってしまいます。
『EVIL HEART』でも、そのことが非常に分かりやすく描かれています。
幼少の頃から合気道の稽古を積んで、二級を持っている女子中学生。
普段から自信満々ですが、実際に暴漢と対峙した場面では、為す術もなく力づくで押さえ込まれてしまいます。
たぶん現実なんてこんなもんじゃないですかね……。
きっと有段者でも男性が本気で力任せに襲ってきたら、ひとたまりもないと思います。
漫画ではこの後に助けが入って事なきを得るんですが、実際にはそんなうまくはいきません。
熟練者ほど合気道が通用しない場面の多さを知っている
新幹線の車内で女性が突然切りかかられ、助けに入った男性が亡くなるという凄惨な事件がありましたね。
そのニュースを見た後の稽古で、あんな状況ではどう対応したらいいか聞いてみたことがあります。
僕はもちろん「合気道をどう使って対処するのか」を聞きたかったんですが……。
返ってきた答えは
「手当り次第にモノを投げつける」
「両手を押さえ込んで蹴る or 助けが来るのを待つ」
「ベルトを外してムチのように振り回す」
という、合気道とはまったく無関係な内容ばかりでした。
五段や六段といった本当の熟練者の方たちは、合気道を使うつもりなどさらさらないんですね。
あんな危険な状況で、しかも新幹線の車内という自由に動けない空間の中ですから。
「どうすれば自分の身を護ることができるか」ということにフォーカスしているので、使う必要のないものは使わないんです。
合気道を知れば知るほどそのすごさも分かってきますが、通用しない場面というものも分かってくるんでしょうね。
じゃあ合気道なんてやるだけ無駄なの?
ここまで否定的なことばかり書いてきてしまいましたが……(^_^;)。
護身術として合気道を稽古するのは無駄なのかと言うと、もちろんそんなことはありません。
ただ、使いどころを誤ってはいけない、ということを強く認識してもらいたかったんです。
それに、技の習得以外にも稽古には他の効果もあります。
合気道は様々な場面を想定した稽古を行います。
例えば、腕の取り方だけでもたくさんの種類があります。
片手取り、交差取り、両手取り、諸手取り、後ろ取り……。
腕を取る以外にも、正面打ちや横面打ち、突き、蹴りまで。
あらゆる相手の攻撃を想定して、それに対応できるように技が構成されています。
自分一人だけでは、なかなかここまでの具体的なイメージは難しいですからね。
稽古を通して「これから起こり得ること」を想像する力が鍛えられます。
これを日常生活に応用すれば、「この曲がり角から人が出てくるかも」とか、「ここから急に人通りが少なくなるな」とか、いろんなことに気付くことができます。
そうなれば、曲がり角からなるべく離れて通ったり、遠回りでも人通りの多い道を選んだり、ちょっとしたことで対策を立てられますよね。
あるいは、「声が出なくなるかも知れないから、防犯ブザーやホイッスルを持っておこう」とか。
護身術は「身を護る術」。
危険な状況から逃れることも護身術ですが、そもそも危険な状況に近づかないことも立派な護身術です。
合気道の稽古を通じて、イメージする力を養ってくださいね。